18世紀、ヨーロッパ諸国では白い陶磁器の開発にしのぎを削っており、ジョサイアもその中の一人でした。ジョサイアは、次々と釉薬や素地の実験を重ねて、ついに英国製陶史上において類稀な、優雅で美しいクリーム色の陶器「クリーム ウェア」を生み出します。
この美しさに目を奪われたシャーロット英国王妃よりティー・サービスのご注文を賜り、クリーム ウェアには「クイーンズ ウェア」という特別な名称が与えられます。「女王陛下の陶工(Potter to Her Majesty)」を拝命されたウェッジウッドの名声は世界中へと広がり、各国の王侯貴族からも相次いでご注文を賜ることとなりました。
美しさや質など、あらゆる点で既存の陶器を凌駕したクイーンズ ウェアは、実用陶器としても非常に優れ、上級階級のみならず広く一般の人々の手に届くようになりました。増え続ける需要に対し、ジョサイアは「こんなにも早く世界中至るところで使われ好まれるとは、本当に驚嘆させられる」(1767.3.12)と書いているほどです。
最も有名なクイーンズ ウェアの作品は、ロシアの女帝エカテリーナⅡ世(Catherine The Great 1729-1796)に献上した、1773年から1774年にかけて制作した「フロッグ サービス(Frog service)」と呼ばれるディナー サービスです。1,244景もの様々な英国の庭園風景を一枚一枚手描きで描いた952点から成るこのセットは、サンクトペテルブルグ近くにあった宮殿用にご注文を賜りました。その宮殿には蛙がたくさんいる沼があり、「蛙の宮殿」の愛称で親しまれていたことから、「フロッグ」の名称の由来となる蛙の紋章が一つ一つに描かれたと伝えられています。ジョサイアは、通常3年以上はかかると言われたこの制作を、芸術家を招聘し、わずか一年以内で完成させました。また、このサービスをロシアに納める前に、ソーホーのロンドンショールームで入場券付きで公開し、好評を博したとされています。世界3大ディナーサービスの一つとされているフロッグ サービスは、現在はロシアのエルミタージュ美術館に所蔵され、訪れる人々のため息を誘っています。
「The Black is sterling and will last forever ~
黒は真正であり、永遠である」
ジョサイア・ウェッジウッド
18世紀後半、イギリスでは芸術の風潮がロココ趣味から新古典主義へと移り、芸術家や建築家は古代への憧れを表現し始めます。クリーム色のクイーンズ ウェアの実現に成功を収めたジョサイアは、次に「黒」に永遠の美を見出しました。1768年、英国スタッフォードシャーで長年「エジプトの黒」として知られ創られていた粗質で黒い陶器を改良し、洗練された「ブラック バサルト」を完成させます。固く密質で、ジョサイアは「自然の石バサルト(玄武岩)と殆ど同じ性質を持つ。」と記録しています。見た目がアンティークのブロンズのようなバサルトは、様々な装飾品に使われました。
バサルトは、自然のにぶい光沢のままにしておくことも磨き上げることも出来ましたが、ジョサイアはその表面を宝石研磨用の施盤で磨き上げ、しばしばエナメル彩で古代の蝋画のような絵付けを施しました。この画法の成分と技法に関し、1769年に特許を取得しています。古代回顧の気運が高まる中で、これらの作品は収集家を満足させるに足りるものでした。

1769年6月13日、ジョサイア・ウェッジウッドは、エトルリア工場を開業します。開業初日にジョサイアは自らろくろを回して、ブラック バサルトによる「First Day's Vase(初日の壷)」を制作しました。
艶やかな表面には、ジョサイアと後に共同経営者となるトーマス・ベントレーの名前、そして「エトルリアの初日に制作されたもの」というフレーズが記されています。 壷の形は、「型見本1巻」の型番号49にあるギリシアのレベースを基にしています。絵柄の、ヒッピシオン、アンティオコス、クレメノスの像の主題はハミルトンの『古代の遺跡』第1巻にある29番の平皿から取られており、銘文に「エトルリア芸術の再興」と記されています。
それまでにない宝石のような美しい焼き物を作ることを夢見たジョサイアは、数千回もの実験を繰り返し、1774年、ついに独自のストーン ウェア「ジャスパー」を完成させます。これは、窯業界への最大の貢献とも言われています。彼は、「絶妙な美しさの、しかもバサルトの特徴を失わず、古今の焼き物がいまだ試みたこともないもの」と述べています。
ジャスパーは硬質のせっ器で、そのマットな質感と気品のある色合いを特徴とします。ユニークさと完成度とで他社の追従を許さず、その独特の典雅な雰囲気は、2世紀を超えた今なお、世界中で支持されています。
ジャスパー制作は、現在も18世紀から受け継がれてきた技術を用います。カメオ風のレリーフ(装飾)は、素地と同じく、ジャスパーを一つ一つ型に入れ、取り出し、水で本体に貼り付けます。その後、1200~1300℃という高温で約30時間焼成し、完成させます。焼成により、素地土の中に練りこまれた着色原料が美しい色へと変化します。これまでに様々な色で制作されてきましたが、一番有名な色は、"ウェッジウッド ブルー"と呼ばれる気品高いペールブルーです。

古代ローマングラスの壷を借り受けたジョサイア・ウェッジウッドが、4年の歳月をかけてジャスパーで精巧に創り上げた、渾身の代表作。創業者の探究心、パイオニア精神の結晶として、現在、このモチーフはロゴデザインの一部に組み入れられています。
"ポートランドの壷"は、もともと古代ローマ時代に作られたローマンガラスの最高傑作とされ、18世紀に芸術品収集家の間で注目を浴びていた作品でした。1786年、ジョサイアは、当時の所有者であったポートランド公爵夫人より壷を借り受け、ジャスパーを用いて完璧なレプリカを作り上げようと思い立ち、制作に励みます。何度となく実験を繰り返し、1789年10月、ジョサイアは4年の歳月をかけ、黒と白のジャスパーを用いた初版のレプリカを完成させました。そして、完成時にロンドンのショールームで招待客だけを招いた展示会をし、さらに名声を高めます。
ジョサイアが制作した初版は現在大英博物館に展示されていますが、その作品は、同博物館所蔵の古代ローマングラスの「ポートランドの壷」が何者かに破壊された際、ウェッジウッドの「ポートランドベース」があったために修復がかなったと言われる程、精緻に創られたものでした。
マットな質感、優しい発色、典雅な雰囲気を特徴とするジャスパーは、これまでに、テーブルウェア、インテリア装飾品、ジュエリーなど、様々な芸術性が高い作品が発表されてきました。現代も18世紀と同じ工程で制作され、時を超えて、今もなおその魅力は衰えることを知りません。
ウェッジウッドの伝統技術の結晶で、熟練のクラフトマンが1点ずつ仕上げるプレステージ作品や、記念の年をお祝いする贈り物としても人気が高いイヤープレートなど、ウェッジウッドならではのジャスパーを用いた作品は、ネオクラシカルなデザインとともに、ユニークさが際立ちます。
また、ジャスパー製のジェエリーの歴史は18世紀に遡りますが、ジャスパー・カメオとよばれる精緻なレリーフが人気を博し、当時から他にはない印象的なジェリーとして貴婦人や紳士に愛されてきました。現在のジュエリーラインナップは、洗練されたファッション アクセントとして、初期のウェッジウッド ジュエリーの優美なスタイルとエレガンスを今に再現しました。
「用の美」を追求した創設者ジョサイア・ウェッジウッドの精神を受け継ぎ、次男ジョサイアⅡ世は、ファイン ボーン チャイナを完成。2世紀以上に渡り、世界中の食卓を彩っています。
1812年、ジョサイアⅡ世はエトルリア工場でボーン チャイナを完成させます。以来、様々なパターンやシェイプで、テーブルウェアやインテリア アイテムを生み出し、世界のボーン チャイナ市場をリードしてきました。
ウェッジウッドのボーン チャイナは、品質の高さから"ファイン ボーン チャイナ"と称され、群を抜く透光性、ぬくもりのある乳白色、釉薬の鮮やかな発色、堅牢性などを特徴とします。特に、温もりがある美しい乳白色は、お食事を美味しく見せてくれると評判です。また、外観の優雅な印象とは対照的なその堅牢性も特筆すべきで、ウェッジウッドのボンドカップ4個で乗用車1台を支えられるほどです。
実用性に優れた美しい製品作りを追求した創設者ジョサイアの精神が、ここかしこに活きているといえるでしょう。













